冬の西穂高を行く西穂独標チャレンジ

〝厳冬期北アルプス〟
言葉だけで恐ろしいのに「週末にちょっと行きましょう」という山仲間の誘いに軽い気持ちで乗ってみた。自分の雪山登山の経験は先月に行った安達太良山だけ、それも天気のいい日に山小屋を往復しただけなので雪山登山経験ありとは言えません。それで元気に「参加します!」とは、ロープウェイから軽く歩いて、山小屋の少し先にあるピークを踏むだけをイメージしていた自分の頭はかなり軽い。

準備を始めたのは3日前。むかう西穂高をリサーチしていくと、どうもイメージしていたのとは違う事に気が付き始めます。まず天気。荒れるとは分かっていましたがヤマテンのアナウンスでは「暴風による行動不能・転滑落、テント倒壊、低体温症、凍傷、視界不良による道迷い・雪庇の踏み抜き、に注意」注意って・・・。とにかく防寒対策だけは抜かりなく、行動着の他にダウンジャケット、ダウンパンツ、ナンガ750DXをザックに詰めます。
そして道のりも簡単ではないようです。北アルプス入門と言われる新穂高ロープウェイ~西穂山荘~西穂独標のルートも、稜線上の強風でいっきにハードになると聞いて慌ててピッケルを用意しました。

1台のワゴン車に全員で相乗りしての移動は旅行感が増して楽しかった。途中、南アルプス、八ヶ岳がはっきり見えて少しながら好天に期待したが、やはり北上するにつれ灰色の雲が空を覆いはじめ、ついにロープウェイに乗るころには重い雪が降りだしました。
こんな天気だというのに、観光スポットである山頂駅は海外からのツアー客で大賑わい。明らかに場違いの服装をした観光客からしても、こちらの格好も不思議に見えるのだろうか。混雑する雪の回廊の入り口でアイゼンを装着して、いざ行かん。

登山口からは重い雪が被った木々のあいだを歩いて行きます。ジャケットのフードに隠れ、静かな独特の感じは実にそれらしく、踏み固められた雪の道も歩きやすかったです。と言っても少し雪道が急になればいつもより大変で息継ぎしながら歩くしまつ。じきに本格的な急登となり、膝に手をついて登れば強風で荒れ狂う稜線に出ることになります。そのあまりの荒れっぷりに山荘のテン場で呆然とする一同。
猛吹雪と視界不良、風速20mは想像よりもハードで、さすがにテントは無理だなと全会一致で小屋泊に変更する事しました。

夜はまだだと言うのに薄暗い外を山荘の窓から眺めていると、薄い布切れ一枚のテントが恐ろしく貧弱に見えた。はたして自分は雪の上で夜を越せるのだろうかと心配になる。

いざ独標へアタック

「ダイナミック雪山!」

快適な山荘で朝を迎えアタックの準備をして外に出た。雲はあるけれど、昨日は見えなかったまわりの山が見える、全部見える。
山荘に閉じ込められていた登山者が一斉飛び出せば、風は昨日よりは弱くなっていた。とは言え山荘前の急な坂を上り、吹きさらしの広い尾根に出れば一気に身体が冷える。自分は寒さに弱いのだろうか、足の指先が痺れ、感覚が薄れてくれば目指す独標がやけに遠くに感じました。

独標に近づくと風は更に強くなり、雪と岩が混じる道は急坂となります。山頂直下、急斜面にアイゼン、ピッケルを懸命に刺してよじ登る。目下上高地まで滑り落ちてしまいそうな危ない所で、このアイゼンに全体重を任せていいものだろうか不安になりながら登る、そしてピークへ。初めての雪山登山は決して大げさでは無く〝命がけ〟まだギザギザの入口と言うのに厳冬期の登山は甘くないですね。いつか行くであろう西穂高岳を眺めながらその先を想うのでした。

■山行日:2018年2月24日~25日
■メンバー:U10さんmokaさんこはなのさん
新穂高ロープウェイHP西穂高山荘HP

  • コメント: 4

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コメント

  1. こう、見直してみるとなかなか過酷な環境でしたね。
    自分は小心者なので、あれがないこれがないと道具先行で心配ばかりしてしまいますが
    beefさんの思い切りの良さは真似できません。とりあえずやってみるって大事。

    自分も上高地に行ったときには、上を眺めて冬に登ることなんて全く想定してませんでした。いつか行くのかな「ないない」ってね。beefさんなら近いうちに西穂高岳、クリアしてそうですねw

      • beef
      • 2018年 3月 08日 11:04am

      道具の購入はいつも最初に失敗して買い替えることになるので、最近は「ひとまずなし」で挑めないか考えます。今回はピッケルがそうだったのですが、なったらヤバかったですね。冬の山はあまくない。これからは、こはなのさんのような失敗しないリサーチ力がほしいす。

      そんな慎重なこはなのさんも最後に忘れ物をしていってしまうドジっ子ぶりを発揮。財布は結んでおきましょう!笑
      どぞ

    • u10
    • 2018年 3月 09日 12:00pm

    あの斜面に立ち向かうには、それ相応の武器が必要でしたね。
    下りのゾクゾク感、痺れましたw

    足先指先の冷え、わかります。
    5本指靴下、インナーに履いて快適でした。
    指は、グローブの中でグッパーして凌いでます(笑)

    煩悩が溢れだしたw
    みんなダダ漏れ

      • beef
      • 2018年 3月 09日 1:09pm

      下りの斜面では足の置き場が分からなくて怖かったです。
      あとで移動のしかたを調べて納得、角度、雪質によって効率のよい足さばきが決まっているのですね。これでどんな斜面でも大丈夫です(おい
      最近い寒がりになったような気がするのは年齢のせいでしょうか。靴下やらインソールとか熱心に調べています。その前に冬靴も試してみたい。物欲やら煩悩やら・・
      ちなみにU10さんの寒さ基準は、一般ではないですからね。笑

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